【失敗しない】経理業務代行サービスの選び方と、導入前に確認すべき重要事項

なぜ今、経理業務代行が必要なのか?
企業経営において、経理業務は事業の健全な運営に不可欠な基盤です。しかし、日々の記帳から給与計算、決算業務、そして頻繁に行われる税法改正への対応など、その業務範囲は広範かつ専門性が求められます。特に中小企業や個人事業主の方々にとって、これらの業務を限られたリソースで効率的にこなすことは大きな負担となり、本業への集中を妨げる要因にもなりかねません。
「経理業務に時間がかかりすぎている」
「専門知識を持つ人材がいない」
「法改正への対応が不安」
――このような課題を抱えているのであれば、経理業務代行サービスの活用が有効な解決策となり得ます。経理業務を外部の専門家に委託することで、コスト削減、業務効率化、そして何よりも貴社の本業への集中を促し、事業成長を加速させることが期待できます。
本記事では、経理業務代行サービスを導入する際に「失敗しない」ための選び方と、事前に確認すべき重要事項を徹底解説します。最適なパートナーを見つけ、貴社の経理体制を盤石なものにするための具体的な道筋をご紹介します。
目次
1.経理業務代行サービスで「できること」「できないこと」を把握する
経理業務代行サービスと一口に言っても、その提供範囲は多岐にわたります。自社が何をどこまでアウトソースしたいのかを明確にすることが、失敗しないサービス選びの第一歩です。
1-1.経理業務代行の基本範囲
経理業務代行サービスで一般的に依頼できる業務は以下の通りです。
✅日常業務:
記帳業務(仕訳入力) | 日々の売上や仕入れ、経費などの取引を会計ソフトに入力し、帳簿を作成する基本業務です。領収書や請求書、通帳のコピーなどを提出することで代行してもらえます。 |
経費精算 | 従業員の立て替え経費の精算処理、領収書の整理・記帳を行います。 |
売掛金・買掛金管理 | 請求書の発行代行、入金確認、支払い処理など、売掛金や買掛金の適切な管理をサポートします。 |
支払い・振込代行 | 振込データの作成やインターネットバンキングを利用した振込手続きの代行などを行います。 |
✅月次業務:
給与計算 | 従業員の給与、残業代、社会保険料、税金などを計算し、給与明細の作成までを代行します。 |
月次決算 | 月ごとの試算表作成や損益計算書・貸借対照表の作成をサポートし、経営状況の早期把握を可能にします。 |
✅年次業務:
年末調整業務 | 従業員の年末調整に関する書類作成や税金の精算を行います。 |
決算・申告業務 | 年間の会計データを集計し、決算書の作成や法人税・消費税などの税務申告書作成をサポートします。 |
1-2.税理士資格の有無による違い(決算申告の代行)
ここで重要な注意点があります。経理業務代行業者には、税理士事務所・会計事務所が提供するものと、経理代行を専門とする一般企業が提供するものの2種類があります。
税務申告書の作成や税務相談は、税理士の独占業務です。そのため、年末調整の税務申告部分や、決算書に基づいた税務申告書の作成までを依頼したい場合は、税理士が在籍している事務所か、税理士と提携している経理代行業者を選ぶ必要があります。
1-3.代行できない業務
経理代行サービスは万能ではありません。一般的に、以下のような財務関連のコア業務や特定の業務は代行範囲外となることが多いです。
財務関連業務 | 資産運用、資金調達、予算管理、M&Aに関する戦略立案など。 |
企画立案やコンサルティング | 経営戦略に直接関わる企画や立案業務。 |
常駐での業務請負 | 日常的に自社オフィスに常駐して業務を行うこと。 |
現金の管理 | 現金の直接的な取り扱いは、内部統制の観点から代行サービスでは対応できないのが一般的です。 |
依頼を検討する際には、自社の「依頼したい業務」と、サービスが「対応できる業務」のミスマッチがないよう、事前にしっかりと確認することが不可欠です。
2.経理業務代行サービス導入の「メリット」と「デメリット」
経理業務代行サービスは、多くの企業にとって効果的な選択肢となり得ますが、メリットとデメリットの両面を理解した上で導入を検討することが重要です。
2-1.メリット
✅本業への集中と生産性向上:
経理業務に費やしていた時間と労力を削減し、売上向上に直結するコア業務や経営戦略の策定に集中できるようになります。
✅人件費・採用コストの削減:
経理専門の人材を雇用する場合にかかる給与、社会保険料、賞与、福利厚生費といった人件費や、採用・教育にかかるコストを大幅に削減できます。
✅専門家による正確性と法改正への対応:
経理のプロが業務を代行するため、入力ミスや計算間違いなどのヒューマンエラーが減り、正確性が向上します。また、頻繁に行われる税法や会計基準の改正(例: インボイス制度、電子帳簿保存法)にも迅速かつ適切に対応してもらえます。
✅業務の属人化解消と不正・ミスの軽減:
経理業務が特定の担当者に集中している場合、その人材の退職や休職で業務が滞るリスクがあります。代行サービスを利用することで属人化が解消され、複数人でのチェック体制により不正やミスを未然に防ぎやすくなります。
✅経営状況の迅速な把握:
専門家による月次決算などにより、経営状況をスピーディーかつ正確に把握できるようになり、適切な経営判断を下すための情報がタイムリーに得られます。
2-2.デメリット
✅社内ノウハウの蓄積不足:
経理業務を外部に委託することで、社内に経理の知識やノウハウが蓄積されにくくなる可能性があります。
✅情報漏洩リスクへの懸念:
会社の財務情報や従業員の個人情報といった機密性の高いデータを外部に預けるため、情報漏洩のリスクはゼロではありません。
✅コミュニケーションコストの発生:
業務の連携や確認のために、サービス提供側との密なコミュニケーションが不可欠です。指示の不明瞭さや情報共有の不足は、かえって手間や誤解を生む原因となることがあります。
✅緊急時の対応スピード:
自社内に経理担当者がいない場合、突発的な確認や緊急対応が必要な際に、外部業者では迅速な対応が難しいケースもあります。
これらのメリットとデメリットを十分に比較検討し、自社の状況や優先順位に合わせた判断をすることが、後悔しないサービス導入に繋がります。
3.失敗しない!経理業務代行サービス選びの重要ポイント
多くの経理業務代行サービスが存在する中で、自社に最適なパートナーを見つけるためには、いくつかの重要な視点から比較検討する必要があります。
3-1.サービス範囲と自社のニーズが合致しているか
最も基本的ながら重要なポイントです。自社がどの経理業務をアウトソースしたいのかを明確にし、その業務に対応しているかを確認しましょう。例えば、記帳代行だけを依頼したいのか、給与計算や月次決算まで含めて一括で依頼したいのかによって、選ぶべきサービスは変わってきます。また、特定の会計ソフトや給与ソフトへの対応可否も確認が必要です。
3-2.セキュリティ体制は万全か
経理情報は企業の機密情報であり、その保護は最重要課題です。以下の点を徹底的に確認しましょう。
秘密保持契約の締結 | 依頼前に必ず秘密保持契約(NDA)が締結されるか確認しましょう。 |
データ暗号化とアクセス制御 | データ送受信時の暗号化(SSL/TLSなど)や、担当者以外のアクセス制限など、情報漏洩を防ぐための技術的・物理的セキュリティ対策が講じられているか。 |
プライバシーマークやISMS認証の取得 | これらの認証は、情報セキュリティマネジメントシステムが国際基準に適合していることの証拠であり、信頼性の高い指標となります。 |
内部統制とスタッフ教育 | 内部不正を防ぐための厳格な内部監査体制や、スタッフの情報セキュリティに対する意識教育が徹底されているか。 |
3-3.専門性と実績は十分か
経理のプロに任せるからこそ、その専門性は重要な判断基準です。
業界経験と実績 | 自社と同規模または同業種の企業での導入実績があるかを確認しましょう。業界特有の会計処理に精通しているサービスであれば、スムーズな移行と高品質な業務が期待できます。 |
税理士の在籍 | 決算申告や税務相談まで含めて依頼したい場合は、税理士資格を持つ専門家が在籍しているか、あるいは税理士事務所が提供するサービスであるかを確認してください。 |
スタッフのスキルと経験 | 公認会計士、経理実務経験が豊富なスタッフなど、質の高い人材が業務を担当するかどうかも重要です。 |
3-4.費用対効果と料金体系の透明性
料金はサービス選びにおいて大きな要素ですが、安さだけで判断するのは危険です。
料金体系の明確さ | 記帳の仕訳数、従業員数、処理件数に応じた従量課金制なのか、月額固定制なのか、基本料金や初期設定費用、オプション料金など、料金体系が明確で分かりやすいかを確認しましょう。 |
見積もりの詳細 | 曖昧な見積もりではなく、サービス内容ごとに具体的に費用が提示されているかを確認し、追加費用が発生する可能性についても事前に確認しておきましょう。 |
3-5.コミュニケーションとサポート体制
スムーズな連携は、経理業務代行を成功させる上で不可欠です。
連絡手段と頻度 | 電話、メール、チャットツールなど、どのような連絡手段で、どの程度の頻度でやり取りを行うのかを確認しましょう。 |
対応スピード | 問い合わせに対するレスポンスの速さや、業務に関する疑問点への回答の的確さも重要です。 |
担当者制の有無 | 専任の担当者がつくことで、コミュニケーションが円滑になり、業務の引き継ぎもスムーズになります。 |
3-6.将来的な業務量の変化に対応できる柔軟性
事業が成長すれば、経理業務量も増加します。それに伴い、依頼する業務範囲や量が増える可能性も考慮し、サービスが柔軟に対応できるかを確認しておくことが賢明です。例えば、業務量の変動に応じてスタッフの人数変更や料金調整が可能なプランがあるかなども確認しましょう。
4.導入前に必ず確認すべき重要事項
経理業務代行サービスを最大限に活用し、失敗を避けるためには、契約前の準備と確認が非常に重要です。
4-1.アウトソースする業務範囲を明確化する
まずは社内で、「どの経理業務をアウトソースしたいのか」「なぜその業務をアウトソースしたいのか」を具体的にリストアップし、優先順位をつけましょう。例えば、「日々の記帳業務の負担を軽減したい」「給与計算のミスをなくしたい」「決算業務のリードタイムを短縮したい」など、具体的な課題と目的を明確にすることで、サービス選定がスムーズになります。
4-2.社内体制の整備と情報共有方法の確立
外部に業務を委託するとはいえ、情報共有や連携は不可欠です。
書類・データ共有のルール化 | 領収書、請求書、通帳データなど、代行業者に提出する書類やデータの種類、送付方法(郵送、クラウド、専用システムなど)、頻度を明確に決めましょう。セキュリティ面も考慮し、安全な方法を選択してください。 |
社内担当者の設定 | サービス提供側との窓口となる社内担当者を決め、スムーズな連絡体制を構築します。 |
既存システムの連携 | 現在使用している会計ソフトやシステムと、代行業者が使用するシステムとの連携可否や、連携にかかる手間などを確認しましょう。 |
4-3.契約内容と秘密保持契約の確認
契約書は細部までしっかりと確認してください。
業務範囲と責任の所在 | 委託する業務範囲が明確に記載されているか、万が一トラブルが発生した場合の責任分担はどうなっているかを確認します。 |
契約期間と解約条件 | 契約期間、自動更新の有無、中途解約時の条件や違約金について確認しましょう。 |
秘密保持契約 | 機密情報の取り扱いに関する条項が明記されているか、特に情報漏洩時の対応について確認します。 |
4-4.費用シミュレーションと予算策定
依頼したい業務範囲とサービス内容が明確になったら、複数の業者から見積もりを取り、比較検討します。単に提示された金額だけでなく、提供されるサービスの品質、対応の速さ、サポート体制なども総合的に評価し、費用対効果が高いかどうかを判断してください。長期的な視点で、人件費削減効果や業務効率化による利益向上なども考慮に入れ、予算を策定しましょう。
5.経理業務代行サービスの費用相場
経理業務代行の費用は、依頼する業務の内容や範囲、取引量、企業の規模、そして依頼先の種類(税理士事務所か一般の代行会社か)によって大きく異なります。
5-1.主な業務ごとの費用相場
記帳代行 | 仕訳数に応じて料金が変動するケースが多く、月間仕訳数が少ない場合は月額数千円〜、多い場合は数万円となります。 (例)月50仕訳までで月額5,000円〜10,000円程度。 |
給与計算代行 | 従業員1人あたりの単価で計算されることが一般的です。 (例)従業員1人あたり月額1,000円〜2,000円。年末調整は別途オプション料金(1人あたり500円〜1,000円)となる場合があります。 |
決算・申告業務 | 単体で依頼する場合、年額10万円〜20万円程度が目安とされます。 月次業務とセットで依頼する場合、月額料金に含まれるか、年間契約の中で調整されることが多いです。 |
月額制の 包括的な代行サービス |
記帳から給与計算、月次決算など複数の業務を包括的に依頼する場合、月額15万円〜50万円程度が相場とされています。 |
5-2.費用を抑えるポイント
アウトソースする範囲の厳選 | 不要な業務まで含めて契約せず、本当に負担になっている業務に絞り込むことでコストを抑えられます。 |
書類の整理・データ化 | 代行業者に渡す前の書類整理やデータ入力などを可能な範囲で自社で行うことで、費用が安くなる場合があります。 |
クラウド会計ソフトの活用 | クラウド会計ソフトを導入している場合、データ連携がスムーズになり、代行費用が抑えられることがあります。 |
6.経理業務代行サービスの導入事例
実際に経理業務代行サービスを導入した企業は、どのような課題を解決し、どのような効果を得ているのでしょうか。ここでは、一般的な導入事例から得られる効果をご紹介します。
✅人手不足の解消と業務負担の軽減:
経理担当者の退職や産休、あるいは専門知識を持つ人材の確保が難しい状況において、外部に委託することで業務が滞ることなく継続できるようになります。特に中小企業では、経営者自身や経理以外の社員が兼務しているケースが多く、彼らの業務負担を大幅に軽減できる効果は大きいです。
✅法改正対応と正確性の向上:
インボイス制度や電子帳簿保存法などの複雑な法改正への対応は、専門知識がないと困難です。代行サービスを利用することで、常に最新の法規制に準拠した正確な経理処理が可能となり、税務リスクを低減できます。これにより、入力ミスが多発していた企業が正しい試算表を得られるようになった例もあります。
✅経営状況の迅速な把握と意思決定の加速:
毎月の記帳や月次決算が迅速に行われることで、タイムリーに正確な経営数値を把握できるようになります。これにより、経営者はよりスピーディーかつ適切な経営判断を下すことが可能になり、事業成長に繋がります。
✅コア業務への集中:
煩雑な経理業務から解放されることで、社員が本来の営業活動やサービス開発など、会社の利益に直結するコア業務に集中できるようになり、組織全体の生産性向上に貢献します。
✅コスト削減:
専門の経理担当者を雇用する場合と比較して、採用コストや人件費を抑えながら、高品質な経理業務を安定的に確保できる場合があります。
これらの事例は、経理業務代行サービスが単なる「業務の肩代わり」に留まらず、企業の成長を力強く後押しする戦略的なツールであることを示しています。
まとめ:最適な経理業務代行サービスで、事業成長を加速させる
経理業務代行サービスは、企業の経理に関する様々な課題を解決し、事業成長を加速させる強力なツールです。しかし、その効果を最大限に引き出し、導入を「失敗」させないためには、自社のニーズを明確にし、サービス内容、セキュリティ体制、専門性、費用、そしてサポート体制といった多角的な視点から慎重に比較検討することが不可欠です。
本記事でご紹介した選び方のポイントや、導入前に確認すべき重要事項を参考に、貴社にとって最適な経理業務代行サービスを見つけてください。経理業務の効率化と品質向上は、貴社の事業を次のステージへと導く確かな一歩となるでしょう。
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